西郷寺

不詳 1353

#1

久保小学校のすぐ隣にある時宗の寺院。二代目住持である託阿(たくあ)の時代に建てられたものという。一遍上人(1239-1289)が生きた時代からは若干下っているが、それでも室町初期の作であり、時宗の寺院としては本作が現存最古という。当然のように国の重要文化財指定を受けている。
本堂の外観はシンプルな和様。屋根の勾配は穏やかで軒もそれほど高くなく、落ち着いた印象。奈良時代あたりのお堂を連想させる形だ。組物もゴテゴテしたものではなく柱上に肘木を置いた簡素なものとなっている。和様らしく蔀戸(しとみど)も見られる(写真#1)。堂内には入れなかったが、内陣を外陣が囲むような平面プランになっており、外陣のスペースを使うことで時宗の特徴である踊念仏がやりやすいように計画されているという。
鎌倉時代に端を発する信仰が建物ともども受け継がれているということは、すなわち鎌倉時代には既にこれらの寺院(すぐ近くには浄土寺や西国寺といった大寺もある)を維持できる経済力が尾道にあったことを示している。こういったところからも商都尾道の奥深さをうかがい知ることができる。