汀邸 遠音近音

石井建築事務所 2010

鞆の水辺に建つホテル。周辺にはいくつもの宿泊施設があるが、ふつうの観光ホテルを超えた水準となると、ここが筆頭格と思われる。宿泊ではなく豪華ランチの客として利用してみた。
もともとこの地にあった江戸時代創業の旅籠「宿屋籠藤」の道路側の部分は残して改装しエントランスとして使用している(写真#1)。木造旅館のスケールにホテルのスケールを挿入する難しいやり方であり、バリアフリーのスロープなどやや無理のある箇所も見られるが(写真#2)、並のホテルには出せない個性を持たせる意味では正解だったといえるだろう。ホテル本体は海側に寄せて距離をとっているので圧迫感はほぼなく、ボリュームはうまく処理されている。また、海際のデッキなど、現代的なやり方で鞆の自然景観を鑑賞する装置が各所に配されている。