Tamaya BLD

小川文象/FUTURE STUDIO 2012

#1:昼間の様子。本通りは旧西国街道でアーケードが架けられている。

#2:夜景を横から。4階の様子が少しわかる。

老舗婦人服店のテナントビルへの建替え。
本作の特徴は外壁を構成する斜材にある。この網のような斜材は飾りではなく、建物を支える構造体として機能している(構造はアラップが担当)。このことにより柱を無くすことができ、浮遊感のあるシンプルな空間表現がなされている。さらにエッジなどのディテールも突き詰め、スラブもできるだけ薄く見せようと工夫されている。特に夜景はすばらしく、余計なものが見えなくなることでスラブが浮かぶシンプルさが強調され、とても見ごたえがある。
一方で、本作には商業建築として見たときの弱点もある。つまり、斜材が全面を覆っているために、ドアなどの開口部を設ける場所が限定されてしまっている。必要に応じて何本か斜材を抜いても大丈夫なのかもしれないが、全面オープンにすることは難しいだろう。これでは、今のようなカフェなら良くても、大きな開口部を求めるテナントには対応できなくなる。
現代のテナント商業建築に最も求められるのは変化への対応力だ。本通りに老舗がほとんど残っていないことから分かるように、店舗の入れ替わりのスパンは極めて短い。建築家は竣工時の美しさを最大化しようとしがちだが、竣工後にテナントがどんどん変化しても、趣味の悪い看板を付けられても、何とかいなして踏みとどまるデザイン。それこそが商業建築には求められる(と私は思う)。
もちろん、構造面でのチャレンジは、本作を並の商業建築ではない出色の建築作品に高めているポイントであり、高く評価されるべきだ。今後どのように変化していくか(弱点が弱点とならないか)注目していきたいと思う。