横川駅前広場

広島市+近代設計コンサルタント 2004

#1:大屋根のトラスを見せる意図が込められている。

#2:色彩を濃い緑色に統一したのも正解だ。国内の同種の事例では白色に塗ってしまい時の経過と共に薄汚れて無残なことになることが多い。

広島デルタの北部市街地の中心である横川駅の駅前広場改良プロジェクト。電停を鉄道駅近くに移設し乗り換え利便性を大きく向上させたほか、広場には大屋根をかけるなど、大々的に整備が行われた。

電停改良のポイントは2つある。

1:従前の電停は道路中央部にありJR横川駅まで距離があったため、駅に近い場所に移設する。
2:移設にあわせ、広電で導入しつつあった長編成のLRV(超低床車)に対応したプラットホームを2線整備する。

電停で2編成を同時に留置できるようになり余裕ができたことで、横川から紙屋町へ直行する路面電車ルートが可能となり、十日市交差点のポイントを改修し7号線を復活させた。これは横川エリア自体のポテンシャルアップにつながる重要な改良だった。

本作はデザイン面にも注目すべきで、その本質は異なる主体間での調整だ。公共空間だけでも国道を管理する国と駅前広場を管理する市がおり、さらに鉄道事業者が広電とJR西日本の二社いる。この四者間での調整はなかなか骨の折れる作業だったものと推測するが、結果的には「レトロ」でほどよく統一されたものとなった。
モダンでなくレトロでデザインを合わせたことには賛否があるだろうが、レトロにすることで実績のある無難な形になり(欧州あたりを見ればいくらでもお手本がある)、低彩度の色彩となり汚れが目立たず、大屋根のトラスの構造美を隠さず見せるという正解にたどり着くことができた。こういったケースではポストモダンに走って寒い造形に陥るパターンが多いが、その失敗の轍は踏んでいない。

ディテールもよくできている。まちづくりの象徴である「復元バス」を広場の中央に置き、その逸話をトランスの面に描きこんでいる。無表情な設備機器に絵を描くことで落書き防止の効果もあるように思う。

一方で、不満もある。第一の不満は、広場のスペースのほぼ全てがクルマと電車のために配分されており、人間のためのスペースがない点だ。もう少し駐車場やタクシープールを減らして、オープンカフェなどに使え人々が滞留できる空間を設けるべきだった。このあたりを実践しているのが姫路駅前広場の再整備であり、大きな成果をあげている。横川はまちづくりが盛んな地域なのだから、地域で広場を管理し稼ぐスキームを組むこともできたのではないかと思う。

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