乙女座

不詳 1937

御手洗の町中に建つ劇場。1937年に当時の町長である鞆田稔が建てたもので、母の名前(トメ)から「乙女座」と命名したという。芝居小屋兼映画館として使われたがやがて閉鎖され、みかんの選果場となった後、2002年に復元工事を受け、観光用に公開されるようになった。
本作の特徴は昭和初期の町場の映画館の趣がよく残されているところにある。ファサードは様式建築の要素を少し拝借して、縦長の窓に列柱っぽい設えやコーニスが付く。室内は、江戸時代以来の伝統的な芝居小屋のスタイルで、天井は格天井。花道や奈落もあるが、かなりの部分は最近の復元のようだ。二階の低い高欄も丁寧な作りであったが、柵が追加されてしまい、より安全にはなったが見栄えを損ねてしまっている。小屋組は当然のようにトラスになっていた。