丸本家住宅/旧広島藩下茶屋役宅

不詳 18世紀

#1:門だけ突出している。

下蒲刈の三之瀬地区は、江戸時代前期の石積み雁木(*1)が残る貴重なエリアである。この地は古来から瀬戸内海を航行する「地乗り航路」の主要な寄港地であり、「海の宿場町」の役割を担ってきた。江戸時代になると藩営の本陣(*2)である「御茶屋」が二箇所置かれていたという。特に将軍に謁見するため朝鮮から渡来する朝鮮通信使を広島藩がこの地でもてなしたのは有名で、「安芸蒲刈御馳走一番」と賞されるほどの歓待であったという。
そんな ”おもてなしの町” 三之瀬の歴史を伝えるのが本作であり、前述した御茶屋のうち「下の茶屋」を管理する武士の邸宅として使用されていた。雁木に面して建つ、切妻・平入り・中二階付きの町家である。特筆すべきは、町家なのに侍屋敷らしく門(薬医門)を持つ点であろう。この門は普段は閉じられ、特別な賓客のみくぐることができたという。