牡蠣祝

中本一哉

#1:門はそのまま残されている。

県内最大の観光地である宮島は旧態依然とした土産物屋が多かったが、外国人客のニーズに対応してか、今の感覚に合うカフェ等が徐々に立地してきている。それらの中でも抜きんでた存在なのが牡蠣祝(かきわい)。牡蠣専門店の支店としてコンセプト重視でデザインされた、古い木造家屋のフルリノベーションである。

本作の特徴は、塔の岡を望む眺望を極限までシンプルに切り取るよう注力したところにある。西側は柱だけになり、屋外テラスと室内は段差が一切ないので、フルオープンにすることで、建物内外が完全に一体化する。塔の岡などは樹木が育ちすぎて視界を遮っているので、宮島でこれほどの開放感を伴う空間体験ができる場所は他にないように思う。
開店時間は短めではあるが、宮島でカフェ休憩したければ真っ先に候補に加えたいスポットといえる。