郷野小学校校舎

不詳 1935

#1

吉田を流れる江の川近くに建つ小学校。戦国大名毛利氏の本拠地として知られる吉田は古くからの荘園であり、周囲には今なお豊かな田園が広がっている。
外観を眺めただけだが、本作はおそらく広島県内に現存する木造校舎では最高クラスの作品と思われる。エントランス周りの意匠は(カッコいいかはさておき)手の込んだもので、ハーフティンバーにドイツ壁、正方形の装飾はセセッションの影響を感じさせる。 内部は典型的な戦前期の木造校舎で、天井が高く窓が大きい。ゴテゴテした装飾があるわけではないが堅実なつくりが印象的。木製の窓枠が(オリジナルかは分からないが)多数使われているのも素晴らしい。登録文化財にはなりうるレベルと思われる。
二階中央の部屋は多目的室とあるが、内装もドイツ壁に格天井となっており明らかにグレードが高いので、校長室だったのかもしれない(写真#8)。また、図書室には和室(床の間付き)が併設されているが、これもオリジナルだろうか?(写真#9)
そして、校庭の芝生の美しさも印象的で、この風景的調和はしばらく見とれてしまうほどだった。
学校としては既に廃校になっており、時折イベントに使われているものの、解体話もあるという。地域の宝物として残せるか、動向に注目したい。