ERE宇品御幸ビル/旧中国配電南部変電所 [現存せず]

不詳 1943

電車通り沿いにあった、かつての変電所。 被爆時の被害は比較的軽微で、戦後は中国電力宇品変電所として1994年まで使われ続けた。一時期コンバージョンされてイタリアンレストランとなったが、再び空き家となり、のちに解体されてしまった。(内部写真は飲食店だった時期に撮影したもの)
エントランスをくぐると機器搬入用の滑車とハッチが見られる。機械を搬入する時は、前面道路から入れて、滑車で持ち上げ、二階レベルのハッチからさらに内部に入れるという設計のようだ。
全体を通して、逓信建築のような雰囲気を感じる佳作だ。戦時下という建築界にとって冬の時代に、変電所という重要施設とはいえ、きちんと建築のデザインをしようという強い意図を感じさせる。当時の物資統制や建築制限を考えると、設計者の苦労もまた大きかったのではないだろうか。それだけに本作を簡単に解体した中国電力の不見識が際立つ。