フレスタモール・カジル横川

北山孝二郎+K計画事務所 2003

JR横川駅に隣接するショッピングモール。元々この場所にあったスーパーマーケット「フレスタ」の改築にあわせて、専門店を加えたモール「カジル横川」となった。

このプロジェクトでは北山創造研究所がトータルプロデュースを行い、北山孝二郎が建築設計を担当している。彼らが過去に手がけた「亀戸サンストリート」は商業モールの傑作だと私は思う。

サンストリートの優れたポイント
1:見通しの利かない路地空間と、ヨーロッパ型の広場空間を巧みに組み合わせている。
2:再開発ビル建設までの「つなぎ」であるため、ローコスト建築になっている。ただし、巧みな配色・露店・サインなどで安っぽさを克服している。
3:「つなぎ」であるが故に、高層ビルの無い低層利用となり、広場からは大きな空が見える。
4:広場では毎日のように何らかのイベントが開催されており、買物目的以外で訪れる人も多く、常に賑わいがある。

このカジル横川については、「中途半端な大きさに中途半端なコンセプトを持ってきたがために中途半端な仕上がりになった」という印象を受ける。計画地は駅前の一等地だがまとまった商業ボリュームを入れるには狭く、しかもL字型である。セオリー通りにフレスタ(スーパー)をアンカーとして奥に配置し、そこに至る回廊沿いに小型専門店を置いているのだが、回廊のデザインコンセプトが見えない。駅からフレスタを経由して西側へ抜ける動線形成のため幅員は広めにしてあるし、象徴的でオーバースケールな庇があったりするのだが、同時に「路地を歩く楽しみ」を指向したがっている。だが、この敷地では両者の併存は難しいわけで、結果として中途半端な空間になってしまった。天井の低さもハンデで、よほど工夫しなければ路地空間にはなりえないのではないか? 「これはただのモールの通路ではないんですよ」といくら言われても、「ただのモールの通路」にしか見えない。
決して醜い建築ではないが、サンストリートの成功を知っているだけに、残念感もひとしおだった。

もしこれがシンプルに「象徴的な大空間」か「歩く楽しみのある路地空間」のどちらかに徹していればかなりスッキリしたと思う。フレスタの位置は奥以外にないから、この場合は前者が良いだろう。駅から敷地の奥に向かって高天井で見通しの利くガレリアを置き(ガラスでもいいが、横川駅のデザインに合わせるのが望ましい)、その両脇に小型店を配置する。これだけで敷地を使い切ってしまうはずだ。