安佐南区スポーツセンター

日建設計 1985

広島市の北部市街地、丘の上に建つ体育館およびプール施設。1994年のアジア大会では水泳会場として使用された。
本作は二つの巨大なヴォールト屋根で構成されている。屋根は一枚ではなく分節化されており、その姿はジェットエンジンのカウル、あるいは某アニメのスペースコロニーを思わせる。特にプール部分は曲面の窓でぐるりと覆われており、宇宙船のような空間。しかも可動式なので、屋外プールにもできる(現在も可動かは不明)。撮影禁止なので写真はないが、プールこそが本作最大の見せ場だろう。
ヴォールトとはアーチをたくさん並べた構造であり、単純な割に大空間を作りやすいので、ヨーロッパの駅などでよく採用されている。この建物の良いところは、変にひねったりせず、とにかくヴォールトに徹したことにある。つい設計していると、「伸びやかな山の稜線を描いて…」「波のような…」と、複雑な曲面の屋根を描いてしまいがちであるが、そんなものはどうせ野暮なデザインに陥ってしまうのだから、構造的に合理的な形をそのまま採用したのは正しい判断だ。
内装については、公共施設の仕様上しょうがない面もあるが、建築として特段鑑賞に耐えるものはない。ただ、例えば下駄箱の形には「半円」のデザインパターンが反映されていたりする。