吉水亭・吉水園

不詳 1782, 1781

加計の町を見渡す丘にある庭園(吉水園)と、園内のあずまや(吉水亭)。規模は決して大きくないが、この地の経済的繁栄がもたらした高い文化水準をうかがわせる県内有数の名品だ。
吉水園は、鉄山開発で財を築いた佐々木八右衛門が1781年に造成し、庭師 清水七郎右衛門(*1)が1788年・1789年・1807年の三度にわたり改修したもので、茅葺入母屋造の吉水亭は地元の大工棟梁 森脇弥右衛門により1782年に建てられた。吉水園は現在でも加計隅屋が所有しており、1991-92年には吉水亭の解体修理が行われている 2)。
吉水亭は回遊式庭園である吉水園の奥、高くなった場所に建てられており、加計の町や背後の山々を借景に吉水園を鑑賞する視点場として計画されている。特徴は、四畳間・六畳間の座敷に加えて、二畳の高間(中二階)が設けられているところだ。木々が育っているので当初の意図とは違うかもしれないが、座敷にレベル差を付けることで眺望を変えており、高間からはより遠方を見通すことができる。細部の意匠において極端に奇をてらったものはないものの、この自由なデザインは数寄屋と呼んでよいだろう。