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原田真宏+原田麻魚 2013

[注意] 本作は現役の住宅です。屋上広場はその性質上一般に開放された空間となっていますが、見学にあたっては住人のご迷惑とならないようプライバシー等への十分な配慮をお願いします。室内写真は棟内モデルルーム見学時に撮影したものであり、普段はもちろん非公開です。


#1:外観。屋上が広場になっている。

#2:図解

斜面地に建つ社宅。瀬戸内海地域の多くの造船所は天然の良港と呼ばれる場所、すなわち川が無く平地の少ない場所(堆積がないので水深が深い)に立地しているが、この造船所でも同様であり、平地に余裕がないために急傾斜地に集合住宅を建てる必要があった。
この条件に対する建築家の答えは、(1) 地域に足りない「まとまったサイズの広場」を作る、(2) そのために建物を崖上に伸ばす、(3) 崖上に伸ばすと崖地が安定しないので先端部はキャンチとする、(4) キャンチとのバランスを取るために山側のボリュームを高層化する、…といったものだった。

道路から階段で少し高いレベルに上がると、そこはPC板が敷き詰められた広い屋上広場(写真#3)。光庭(屋外階段を兼ねる。写真#4)の開口部以外には何もなく、崖上なので眺望は素晴らしい。この「何もない」というのが普通のマンションと建築作品との決定的な違いで、普通は屋上に置かれるはずの設備機器の姿もなく、シンプルにまとめられている。形状こそ違うが、基町高層アパートの屋上庭園に近い空間だ。先端部分のキャンチについても上述の通り明確な理由があり、造形に説得力がある。
屋上広場階にはエントランスホールに共用キッチンが併設され、この広場をコミュニティの共有空間として使われることが意図されている。

大変残念だったのは、手すりや外階段に多用されたコールテン鋼。耐候性が期待されたのだろうし、造船所らしさの表現にもなっていると思うのだが、サビが周辺をかなり汚してしまっている。狙って汚したとは思えないので、想定通りに錆びてくれなかったということだろうか。