海上自衛隊呉音楽隊(桜松館)

不詳 1929?

入船山公園に行く途中、美術館通りと呼ばれるプロムナード沿いに「呉音楽隊」と書かれた建物がある。外観だけで昭和初期のRCであることは推測できたが、幸運にも中に入る機会を得たのでレポートしたい。
この建物は「桜松館(おうしょうかん)」といい、旧海軍が下士官兵集会所に隣接して建てたホールである。つまり美術館通りからみて裏側が本来のファサードということになる。赤系の塗料で塗られてしまっているが、当初はもっと上品な色であったことだろう。なお、桜松館とは、日露戦争で沈没した軍艦吉野と高砂を記念し、吉野の「桜」と高砂の「松」から命名されたらしい。
現在は音楽隊の練習場所として使用されておりホール機能はかなり失われているが、それでも装飾類は奇跡的に往時のまま残されている。正面のレリーフは「呉」に大砲、錨、桜。さらに周囲の見事なアールデコに目を奪われる。よくよく考えると広島でまともなアールデコ装飾を他に見たことがない。現存例としては間違いなく県内有数のものといえるだろう。