二河橋

不詳 1932

呉駅から両城方面に向かう途中、二河川(にこうがわ)に架けられた橋。川の名前を冠するということは、橋としての序列が高いことを意味する(例えば広島市の京橋や猿猴橋もそう)が、その名に違わぬ名品である。かつては川原石に向かう路面電車がここを走っていた。
何といっても注目すべきはこの欄干だ。左右対称で規則正しい造形でアールデコ風。建設から80年近く経つが、薄汚れた感じさえも味わいになっている。参考文献1)によると欄干は「花崗石、手摺及間柱鋳物金物(欄間)」とあり、少なくとも金物部分は戦時中の金属供出で失われたようだ。ただ、桁自体もコンクリートなので、欄干がコンクリート&石だけになったことで結果的に素材が統一されており、これはこれで悪くない。これほどレベルの高いものは広島県内にはそう多くないはずで、もっと有名になっていい逸品だ。

日本の土木デザインは1920~30年代に黄金期を迎え、戦後は急激にレベルが低下し、今なお見るに堪えないものが大半だ。この二河橋についても、最近直されたと思われる舗装部分のデザインレベルがあまりに低く、欄干の素晴らしさと対照的である(恥ずかしくないのだろうかと思ってしまう…)。