まなびの館ローズコム(福山市中央図書館、生涯学習プラザ)

日建設計 2008

#1:左が図書館部分、右が駐車場部分

#2:水盤と閲覧室は同じレベルにある。日よけの大庇が印象的。

福山の中心部、藩校誠之館の跡地にある中央公園に隣接して建つ、図書館を中心とする公共施設。建物のボリュームは大きく二つに分かれ、二棟のように見える(写真#1)。向かって左側が図書館部分で、1~2階が閲覧室、3階が書庫、4階はミーティングルーム。向かって右側が駐車場部分で、1階がエントランス、2~4階は自走式駐車場と放送大学サテライトがある。

外観・内装を構成する要素は、コンクリート、レンガ、ガラス、木の四種類で、場所毎に使い分けている。エントランス空間はレンガ壁にコンクリートの格天井で、正直なところ、第一印象はベタな空間だと思ったが、昭和の公共建築へのオマージュとも解釈できる(写真#4)。

図書館の外観はガラス・大庇・レンガで構成される。図書館は日差し対策が重要になるが、本作の場合は閲覧室が北向きであり、さらに大庇を付けたことで、どの季節でもブラインドは不要であり、閲覧室に開放感をもたらした(写真#2)。周囲に設けられた水盤は公園利用者が図書館に近づきすぎないバリアであり、公園と図書館の境界をぼかす装置ともなっている。
図書館の内部は、中央の吹き抜け(トップライトから光を導く)を囲んで閲覧スペースがあり、外側に書架、さらに閲覧スペースが並んでいる。南側の壁で耐震性を確保することで閲覧室の柱を細くできている。柱が細いために相対的にややうるさく感じるコンクリートの格天井も表現として破綻しているわけではない。来館者の数も多く、新築であることを差し引いても、今なお図書館へのニーズは大きいと感じた。
個人的にツボにはまったのが、隅に微妙なアールを持たせた階段室(写真#10)。こういったディテールのおさえは昔のモダニズム建築の良さに通じるものであり、本作の建築作品としての質を高めている。

ちなみに、夜間にも訪問してみたが、格天井の陰影が薄まってフラットになることで、見栄えは昼以上に良くなっているように感じた(写真#6と#12の比較)。