基町クレド

NTT都市開発+日建設計+日総建 1994

広島の都心、紙屋町に建つ中四国最大規模の都市型大型複合施設。ホテル、100店が集積する専門店街「Pacela」、百貨店のそごう、イベントホール等から構成される。特に高さ150mの高層棟は広島で数少ない超高層建物の一つであり、まさに都心のランドマークとなっている。
建築としての見どころはホテルと百貨店の間、「Pacela」と一体になったアトリウムであろう。空間をカーブさせ積層させながら奥行き感や界隈性を演出し、敷地の奥深くに訪問者を引き込む空間構成になっている。同種のアトリウムは全国各地の商業施設に見られるが、本作はかなり良くできた部類と思う。
また、舗装材から各種サイン、さりげなく置かれたベンチに至るまで意識して高級感・グレード感を演出している点も見逃せない。ディテールが安っぽいと建築意匠が巧みでも全体として良い結果にはならず、設計段階において施設や来街者のイメージを設計者と商業プランナーとクライアントの間で共有できたのだろう。バブル期の計画だったとはいえ、昨今の商業施設のあまりに貧相な仕上がりとは一線を画している。サインデザインやアストラムラインとの接続など、複合開発にしてはうまく解かれていると感じる。
残念なのはスカイパティオまわりだろうか。まず1階レベルから「アトリウムの奥にスカイパティオが控えている」気配を感じにくく、スカイパティオにアプローチする直前の空間のデザイン密度がやや甘い。それと、サンクンガーデンの位置づけが中途半端で、もう少し地上広場を広げても良いのではと思えた。
とはいえ、これよりひどい商業施設はいくらでもあり、本作は全体的にはとても良くできている。都心部の商業施設設計のお手本として見に行く価値はあるだろう。

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